舞鶴鎮守府別館からの雑感

鎮守府別館から個人的な雑感を述べます。

大学で習った倫理綱領を読み直してみる

ふと、軍事研究に関する記事を書いていて思った事がありました。

「そういえば大学でも倫理に関する授業があったな」と。

という事で、大学で習った倫理綱領について書いていきたいと思います。どんな内容が書かれているのか、どんな事を指し示しているのか自分がかつて考えたことを付け加えながら紹介していきたいと思います。

全米PE協会(NSPE)の基本的規範

PEというのはProfessional Engineerのことで日本における「技術士」の資格に相当します。そのPEの団体が定める基本的規範(Fundamental Canons)を見ていきましょうか。以下のサイトで確認することができます。

Code of Ethics | National Society of Professional Engineers

日本語訳もありますので、興味のある方は是非ご参照ください。

基本的規範のところを抜き出してみましょう。(因みに、上記サイトでは根源的規範となっていますが、私は大学で基本的規範と習ったので、当ブログでは基本的規範で統一します。)

 I. Fundamental Canons
Engineers, in the fulfillment of their professional duties, shall:
1. Hold paramount the safety, health, and welfare of the public.
2. Perform services only in areas of their competence.
3. Issue public statements only in an objective and truthful manner.
4. Act for each employer or client as faithful agents or trustees.
5. Avoid deceptive acts.
6. Conduct themselves honorably, responsibly, ethically, and lawfully so as to enhance the honor, reputation, and usefulness of the profession.

 さて、日本語版にはどのようにして書かれているでしょうか。

I. Fundamental Canons 根源的規範

エンジニアは、自身の専門職としての責務を遂行するにあたり、以下を規範としなければならない。
1. 公共の安全、衛生、及び福利を最優先とする。
2. 自身の専門能力の範囲内でのみ役務を遂行する。
3. 公式声明は、客観的かつ誠実な態度でのみ行う。
4. 自身の雇用主あるいは顧客のために、誠実な代理人または受託者として行動する。
5. 欺瞞的な行動を回避する。
6. この専門職の名誉、評判、及び有用性を高めるため、自身の誇りと責任を持ち、倫理的かつ法を遵守 した振舞いを示す。

 さて、それぞれ自分の思った事を書いていきましょうか。1は当然かかわる人間を守れという事でしょう。2は自分が無理だと思うようなことは引き受けてはいけないという事でしょうか。安請け合いしてできなかったでは顧客にも迷惑が掛かりますし。3は嘘をつくなという当然のことを言っています。人間どうしても保身に走りがちですが、それを諌めているのでしょう。4は引き受けたらその人のために行動せよという事でしょうね。(あまり書いてあることと変わりませんが・・・。)5は3と同じく嘘をつくなという事なのでしょう。特に3は公的に嘘をついてはいけない。一方の5は行動自体を諌めているのでしょうか?6は自分の専門に関する名声を高めよという事でしょう。

思った事と言ってもあまり書いてある内容と変わらない事しかかけてないところもありますが・・・。因みにこの基本的規範の次は実務規定(Rules of Practice)、専門職としての義務(Professional Obligations)と続きます。そこまで書いてしまうと長くなり過ぎて引用の範囲を超えてしまうのでここでやめておきましょう。

日本技術士会の倫理綱領

次は日本技術士会の倫理綱領を見てみましょうか。日本技術士会の倫理綱領は以下のサイトで確認できます。

技術士倫理綱領|公益社団法人 日本技術士会

倫理綱領を抜き出してみましょう。

【基本綱領】
(公衆の利益の優先)
 1.技術士は、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮する。

(持続可能性の確保)
 2.技術士は、地球環境の保全等、将来世代にわたる社会の持続可能性の確保に努める。

(有能性の重視)
 3.技術士は、自分の力量が及ぶ範囲の業務を行い、確信のない業務には携わらない。

(真実性の確保)
 4.技術士は、報告、説明又は発表を、客観的でかつ事実に基づいた情報を用いて行う。

(公正かつ誠実な履行)
 5.技術士は、公正な分析と判断に基づき、託された業務を誠実に履行する。

(秘密の保持)
 6.技術士は、業務上知り得た秘密を、正当な理由がなく他に漏らしたり、転用したりしない。

(信用の保持)
 7.技術士は、品位を保持し、欺瞞的な行為、不当な報酬の授受等、信用を失うような行為をしない。

(相互の協力)
 8.技術士は、相互に信頼し、相手の立場を尊重して協力するように努める。

(法規の遵守等)
 9.技術士は、業務の対象となる地域の法規を遵守し、文化的価値を尊重する。

(継続研鑚)
 10.技術士は、常に専門技術の力量並びに技術と社会が接する領域の知識を高めるとともに、人材育成に努める。

 NSPEの基本的規範と比べると、幾分か具体的な内容になっているのが分かると思います。ちょっと違うのは6、8、10でしょうか。この内容はNSPEの基本的規範には無いものです。ただ、6番は近年の不況やリストラなどで必ずしも守られているとは思えないようなニュースをよく耳にします。勿論、本人の意思を縛ってはいけないという私の考えもありますので、それはそれでいいと思っています。6番を守れるような社会や会社を作っていかなくてはいけないのです。8番はどうでしょうか。お互いに不信を抱いてしまうのはやはり人間ですからあるのでしょう。そもそも業務は契約によって行われるのですが、その一方で円滑な仕事には相互信頼は欠かせないでしょうね。10番は人材を育成せよというものですが、自分の立場を守るために人材を育成しないなんて言う日本の会社の悪い風土何てTwitter上で揶揄されていますね。そんな事が無くなればいいのですが。

さて、最後は自分が専門とする建築系の団体やら学会の倫理綱領でも見てみましょうか。

建築系団体の倫理綱領

日本建築士会連合会という団体があります。この団体も倫理綱領があるようです。ですが読んでみても正直技術士会の焼き直し、というかあまり変わりませんでした。因みに以下のサイトから確認できます。(PDF注意)

http://www.kenchiku-cpd.jp/~photo/flash-data/shiryo/rinri-kitei/rinri-kitei.swf

なので今回は日本建築学会の行動規範を引用してみましょう。以下のサイトで確認できます。

日本建築学会倫理綱領・行動規範

倫理綱領は宣言文のようなものだったので、行動規範の方が他の倫理綱領などと近いでしょう。

行動規範日本建築学会の会員は

1.人類の福祉のために,自らの叡智と,培った学術・技術・芸術の持ち得る能力を傾注し,勇気と熱意をもって建築と都市環境の創造を目指す。

2.深い知識と高い判断力をもって,社会生活の安全と人々の生活価値を高めるための努力を惜しまない。

3.持続可能な発展を目指し,資源の有限性を認識するとともに,自然や地球環境のために廃棄物や汚染の発生を最小限にする。

4.建築が近隣や社会に及ぼす影響を自ら評価し,良質な社会資本の充実と公共の利益のために努力する。

5.社会に対して不当な損害を招き得るいかなる可能性をも公にし,排除するよう努力する。

6.基本的人権を尊重し,他者の知的成果,著作権を侵さない。

7.自らの専門分野において情報を発信するとともに,会員相互はもとより他の職能集団を尊重し協力を惜しまない。

やはり建築学会の行動規範という感じがしますね。行動規範に「芸術」とか「著作権」とか「都市環境」とか言う単語が出てきます。しかし、どこか他の倫理綱領に通じるものが感じられますね。

倫理綱領を読み終えて

正直私は他者から何らかの形で倫理や道徳を強制されるのは好きではありませんし、拒否感もあります。というのも私たちには良心の自由というものがありますし、倫理や道徳は人によって違うのですから。ですが、「流石にこれはまずいよね」とか思うことだってありますよ。もっとも、倫理綱領はそれをまとめたものなのかもしれませんが。私は倫理綱領は一つの判断材料であって、最後に判断するのは自分だと思っています。他者に価値観を押し付けず、しかし悪影響を与えず、そんな行動をとりたいものです。